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――筆者のジョアンナ・スターンはWSJパーソナルテクノロジー担当コラム二スト

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 米ネブラスカ州ヘンダーソン在住のジョン・ロイターさん(29)は、寝起きの髪もそのままに朝食も食べずにクレジットカードをつかむと愛車のクライスラーに飛び乗った。そしてグランドキャニオンの空港まで2時間半ひたすら走り続けた。

 そこでロイターさんはヘリコプターに乗り換えると、高くそびえる岩の壁をくぐり抜け、谷底にあるヘリポートを目指した。ヘリを降りたロイターさんは数歩進んで自動販売機の前に立った。売られていたのは130ドル(約1万4000円)のビデオカメラ付きサングラス。いま熱狂的な人気を博している米スナップ(旧スナップチャット)の「スペクタクルズ」である。

 「これが何なのか全く分からない。(メッセージアプリの)スナップチャットさえ持っていない」とロイターさんは話す。「知っているのはみんなが喉から手が出るほど欲しがっているということだけ」。自販機でサングラスを4個購入するとヘリで戻り――飛行代は250ドル――すぐにオークションサイトのイーベイに出品。翌朝までに1100ドルの利益を手にした。

 スナップは10秒間の動画が撮影できるスペクタクルズを販売するために、オンライン通販や実店舗を使わず、オタク版「ハンガーゲーム」を現実にしたようなマーケティング戦略を打ち立てた。

 エバン・スピーゲル最高経営責任者(CEO)が決めたルールはこうだ。スペクタクルズは自動販売機「スナップボット」でのみ販売する。自動販売機は警備員に監視されており、同じ場所にあるのは数時間だけ。置き場所はウェブサイト「spectacles.com/map」で12時間から24時間のカウントダウン後に発表される。

 置き場所が発表されれば、あとは早い者勝ちだ。購入は1人2個までとなっている。購入者によると、自動販売機には約200個の商品が入っており、補充の保証はない。

 カリフォルニア州に自動販売機が置かれた際には数百人規模の長い列ができた。オクラホマ州やグランドキャニオンの谷底のような人里離れた場所では列は短かった。

 21日にはニューヨーク市内に突然、1台の自動販売機が現れた。スナップによると、この自動販売機は年末商戦の間ずっと置かれ、絶え間なく補充される予定だ。

 このマーケティング戦略は将来、「経済学入門」の教科書に「希少価値」の項目の中で紹介されることになるかもしれない。

 この数週間の間に、二次流通で最大1500 ドルも出して購入した人もいる。ただ、列に並ぶ人の多くはビデオカメラ付きメガネの楽しい未来を求めているわけではなく、住宅や学費ローンの支払いや、クリスマスプレゼントを買うための現金を得る手段と考えている。ニューヨークでの販売で供給が広がれば、再販価格は下落するだろう。

 オーストラリア・クリーンズランド州に住むインターネット関連の起業家ガン・ハドソンさん(29)はスペクタクルズが欲しいあまり、オーストラリアまでの往復航空チケットと交換で譲ってほしいとイーベイに投稿した。

 これに応じた米ロサンゼルス在住のクリス・トリンさん(28)は「初めはジョークだと思った」と振り返る。トリンさんは手に入れた2個のスペクタクルズをイーベイに1個1200ドルで出品。売れ残った1個を往復チケットと交換することにした。

 「30分もたたないうちに私たちはビデオチャットをし、1時間もしないうちにチケットを手に入れていた」とトリンさん。上司に来週旅行に行くと告げた。オーストラリアではハドソンさんと熱気球に乗ったりカンガルーを見たりして過ごした。

 「メガネに興味があったし、誰かと一緒に冒険することにも興味があった」とハドソンさんは話す。アプリのスナップチャットに多くの時間を費やしているハドソンさんの動画1本の平均閲覧回数は1000回だという。

 トリンさんとハドソンさんはスナップチャットで互いに動画を共有している。「3500ドル近くを使ったが、その価値はあった」とハドソンさんは満足気だ。

By JOANNA STERN



引用:スナップチャットの動画撮影メガネ、奇抜な販売戦略で大人気


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